詩 ベツレヘムの星

○ぶどうの枝第57号(2022年12月25日発行)に掲載(執筆者:MS)

ほのかに瞬く光
部屋の中でゲームなんかして
寝てばかりだった小さな星は
春深まるラジオから
地球星のこどもたちの 鈴なりの歌声を聞いたんだ

イエスさまはいつ来られるのかと
背伸びして遠く東を眺めるこどもたち
「今度は私たちがまぶねをつくろう
その次にマリアさまを連れてきて
赤ちゃんイエスが生まれたら 花の茂みに寝かせよう
羊飼いがやってきたら 焚火をたいてあげなくちゃ」
だからお小遣いをためているというエピソードまで聞いたんだ

ある日こどもたちが道で讃美歌を歌っていたら
「あんたたち ここで何してるの!」
通りかかる人たちの石ころのような視線に
こどもたちは道に隠れ
道はこどもたちの後ろに隠れ
壊れた風の音ばかりが聞こえたんだ

日ごとにこどもたちの讃美歌を聞きながら
きらきらと夢を見ていた小さな星は
いくら周波数を合わせても
こどもたちの歌が聞こえない

通りすがりの明けの明星に
遊牧民のように流れ行く天の川に道を尋ね
夢見るように地球星の町にやって来たのに

こどもたちは どこにも姿が見えず

家の門の前
路地
町をぐるりと囲む
神社と寺
曲がり角
野原で

鈴なりに 歌声だけが光っていたんだ
こどもたちを探す周波数だけが
つやつやきらきらと光っていたんだ