2021年8月15日「契約のしるし」

○金 南錫牧師  創世記17章1-27節

 先週の創世記16章は、「ハガルがイシュマエルを産んだとき、アブラムは八十六歳であった」ことが記されて終わっています。そして、今日の17章は「アブラムが九十九歳になった」ことを告げて始まっています。その間の十三年間のことは何一つ記されていません。この空白の十三年間、アブラムには神の御声が聞こえて来ませんでした。神の沈黙です。

 この神の沈黙の十三年間、アブラムにとって神様の約束を忘れさせる期間であったかも知れません。あるいは、信仰を失いつつある時期と言えるかも知れません。しかし、そういうアブラムに、神様が現れてくださるのです。それも、全能の神様として現れてくださるのです。そして、アブラムに「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい」と語り、完全な服従を求めます。そして、アブラムが忘れていたあの約束「あなたをますます増やすであろう」という約束を繰り返してくださるのです。しかも、この時は「わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立てる」という言葉を伴って、この約束を更新してくださるのです(2節)。

 アブラムは、神様の約束の言葉の前に、「ひれ伏し」ます(3節)。そして神様の語りかけに耳を傾けます。その神の語りかけが22節まで続いています。まず、4節から8節までを見ますと、名前がアブラムからアブラハムに改名されることと、永遠の契約を立ててくださることが記されています。そして、神様が立ててくださる契約の内容は、子孫を増やしてくださることと、カナンの土地を与えるということですが、8節にありますように、その根源は、「わたしは彼らの神となる」ということに尽きます。どんなことがあったとしても、私はあなたの神、またあなたの子孫の神である、それは永遠に変わることのない契約であるとおっしゃるのです。

 9節から14節までには、「割礼」について、記されています。今まで、ひたすら神様ご自身が立ててくださる契約が記されていましたが、9節以下は、アブラハムとその家族がどのように契約を守るかが記されています。10節に「あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける」とあります。割礼は男の包皮の部分を切り落とすことで、それが、神様との契約のしるしとなったのです(13節)。

 アブラハムはこの後、23節以下にもありますように、神様の言葉に従って割礼を受けることによって、神様との契約関係に入っていくことになります。今日に生きるキリスト者である私たちは皆、新しい契約によって神の民とされました。神様が立ててくださった新しい契約、それは神様の独り子イエス・キリストの十字架の死と復活を通して、私たちの罪を赦し、新しく神の子として生かすという約束をしてくださったのです。

 神様は今、神の約束を信じることなく、この世の習慣によって子どもをもうけて十三年を経てしまったアブラムに、新しく出会い、あの古くて新しい約束を語りかけてくださいました。これまで何度も不信仰に陥ってきたアブラハムですが、神様は、十三年の沈黙の時を経て、新しく彼を生まれ変わらせようと語りかけてくださったのです。私たちも同じです。時には、不信仰に陥り、罪を犯し、鈍くなっている私たちを、なおも顧みて、今日も新しく十字架と復活による赦しを与え、神の子として生きる命を与えようとして語りかけて下さっているのです。この語りかけに応えていこうではありませんか。